こんにちは!東京農工大学宇宙工学研究部Lightusです。
2022年度前期のロケット班の活動について,ご報告いたします。

1. 概要

 例年,3月の能代宇宙イベント後に行われている各班長の引き継ぎは,活動制限の影響で現B3が十分な知識や経験を有していないことを理由に,3月の伊豆大島共同打上実験の後新年度に合わせて行われました.新入生約15名も迎えた新体制のもと,B3を主導として新年度の活動を開始しました。
 当初の予定では,製作中であったGSEを完成させ,8月の第18回能代宇宙イベントで1機の陸打ちを行う予定でしたが,GSEの製作・運用についての計画の遅延やそれに伴うロケット製作の遅延により断念することとなりました。本活動報告を執筆している10月上旬現在は,11月に行われる予定の第21回伊豆大島共同打上実験に向けて,ロケットの製作など準備を進めています。

2. GSE・燃焼試験について

 Lightusはハイブリッドロケット打上に必須な,酸化剤の充填やエンジンの点火を行う設備であるGSE(地上支援設備)を保有していなかったため,2016年の伊豆大島でのハイブリッドロケット初打上から2022年3月の伊豆大島での打上に至るまで,すべて委託やメンターなど他団体のご協力のもと打上を行っていました。この状況を脱却するため、2018年頃からGSEの製作が進められていましたが,活動制限の影響で2020年から2年近く製作が凍結されていました。このGSEや燃焼試験に必要な燃焼架台を完成させて、ハイブリッドロケット打上能力を有することが本年度の最優先課題となりました。
 4月の時点で,GSEについては配管はおおむね完成し,残すはイグナイター部を含む電気系統の製作のみという状況でした。その電気系統の製作も6月上旬に終了し,GSEを「完成」させることとなりました。ところが,その後行われたN₂ラインおよびO₂ラインのリークチェックの結果配管の不備が複数見つかり,配管の見直しを余儀なくされました。その後,N₂ラインおよびO₂ラインについて,正常に動作することをリークチェックで確認することができました。また,9月にはO₂を用いたN₂Oラインのリークチェックを行い,こちらも問題がないことを確認しました。
 これを踏まえ,10月2日に千葉県鋸南町で自団体GSEを用いたものとしては初の燃焼試験をCORE様と共同で実施しました。この初の燃焼試験において,CORE様に燃焼架台をお借りし,また運用について様々ご教示いただきました結果,無事にHyperTEK J250の燃焼および推力データの取得に成功しました。CORE様にはGSE完成まで複数回Lightus機体の打上を委託させていただいたほか,今回の燃焼試験を含めてGSEの製作について様々ご協力いただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 今後は,燃焼試験での反省をもとに,11月伊豆大島にむけてシーケンスや運用手順の改善を進めていきます。また,現在製作中の燃焼架台を完成させたうえで,次回以降の燃焼試験は他団体様の助力なしに完全独力で行えるよう,準備を進めていく予定です。

3. 打上予定のロケットについて

 11月の第21回伊豆大島共同打上実験に向けて製作を進めているロケットの概要をご紹介します。

図1 機体概形

表1 機体仕様

機体名Lightus-09(仮称)
全長1570 mm
直径104 mm
乾燥重量6.06 kg
エンジンHyperTEK J250
予想到達高度416 m

 11月に打上予定のこの機体は,当初8月の能代宇宙イベントでの打上を目指して設計されていた機体であり,9月時点で既に7割程度製作が完了しています。現在は,電装部や解放機構など搭載品の製作や機体デザインの選定を行っています。
 今回の打上はLightus燃焼班にとって,「委託やメンターではない,初の自団体運用GSEによる打上」と言う点で非常に大きな意義があります。
 構造班製作の機体は,前機体のLightus-08 “Calcifer”と比べて,基本的な構造や解放機構はそのままに小型化を行っています。また,前回の大きな反省点であった工作精度について,今回の機体は農工大ものづくりセンターの多大なご協力のもと可能な限り高い精度で製作を行っています。
 電装班は,今回の打上を目標である取得データのリアルタイム解析の達成に向けたハードウェアの実証と位置づけています。前回打上でデータ取得に失敗した電装部について原因を調査したところ,電源回路にミスがあり一部の電圧が不足していたことが原因である可能性が極めて高いという結論に至りました。また,他にもすべての系統が一枚の基板で完結していたために回路のミスや破損が見つかった際の修正が困難であること,冗長系がなくシステム全体としての信頼性に問題があることも大きな反省点となりました。これらの反省を踏まえて,今回の機体ではハードウェアの設計を一から見直し,複数系統を備えて冗長系を設ける,系統ごとに基板を分けて開発や修正を容易にするなどの改良を行っています。新設計のハードウェアのもと,前回のリベンジを果たす所存です。

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