こんにちは!東京農工大学宇宙工学研究部Lightusです.
2022年度後期のLightusの活動や組織改革の内容,今後の予定についてご報告致します.
1. 活動報告
①(ハイブリッドロケット)自団体GSEによる初の燃焼試験の実施
2022年10月2日,Lightusとしては初の自団体GSEによる燃焼試験をCORE様と合同で実施しました.この試験で無事にHyperTEK J250の燃焼に成功しました.
2016年の初打上から約6年半,製作を開始してから活動制限を含んで約4年の期間を要する,発足以来最大のプロジェクトなりました.
※GSE:Ground Support Equipment(地上支援設備)の略.ロケットの点火やタンクへの酸化剤の充填を行う.いわゆる打上装置.
② (ハイブリッドロケット)第21回伊豆大島共同打上実験への参加
11月に行われた、第21回伊豆大島共同打上実験に参加しました.初めに、運営の皆様をはじめとして、他団体の皆様や大島町の皆様など、今回の共同打上実験についてご尽力、ご協力いただいた皆様には改めて心より御礼申し上げます.
自団体GSE「完成」後初の共同打上実験参加であることを踏まえ,以下を目標として設定しました.
・自団体GSEによる打上の成功
・リーフィング機構の正常な動作
・飛行データのダウンリンクの成功
Lightus-09 “Sparrowhawk”は,ハイブリッドロケットモータとしてHyperTEK J250を搭載した,Lightus-08 “Calcifer”と比較してモータは同じながらも一回り小型の機体となりました.”Calcifer”から引き続きリーフィング機構(パラシュート展開後に展開具合を調整する機構)のほか,機能を向上させた新設計の電装やアクションカメラを搭載しました.また,課題であった工作精度についても大きく向上させることとなりました.そして,今回の打上は委託やメンターによらない初の自団体で製作,運用するGSEによる打上であるという点で,Lightusにとって大きな意味を持つ打上でした.
しかしながら,打上当日に電装系について発生した複数のトラブルに加えて,打上直前に発生したGSEのトラブルが決定的となり,打上断念という結果となりました.打上時,モータへの点火は高電圧を用いて火花を発生させることで行いますが,打上前,GSEを展開して動作試験を行っている際にこの火花が発生しないことが判明しました.トラブルシュートの結果,高電圧を制御する電気系統の不具合が原因であることがわかりましたが,より具体的な原因の特定は当日の短い時間の中では困難であり,部品の交換など対処を行うことが不可能であったことから,打上断念という判断を下すこととなりました.打上後の調査の結果,高電圧を制御するための半導体リレーに対する制御電流の不足が原因であると判明しました.この他にも,参加直前にGSEに問題が発覚するなど,総じてトラブルに追われる実験となりました.
今回の実験参加は,プロジェクト管理,技術両面において反省点や課題が多く見つかるものとなりました.結果こそ大変残念なものに終わってしまいましたが,今回の実験で得た様々な経験をもとに,次回の打上を成功させてリベンジを果たすため,新たな機体の製作やGSEの改良などの活動に積極的に取り組んでまいります.
③(モデルロケット)モデルロケット試射会の実施
2月に,Lightusとしては約3年ぶりとなるモデルロケットの打上を農工大航空研究会と合同で実施しました.モデルロケット打上経験のある部員が殆どいなかったことから,まずはモデルロケットについて知ること,打上を経験することを目的に,A型エンジンを搭載した3機を製作し打上を行いました.
2. 組織改革
Lightusは設立当初から,活動内容に応じて構造班,電装班,燃焼班(これら3つをまとめてロケット班と呼称),CanSat班の4つに分かれて,それぞれ活動を行ってきました.この体制の問題点として,ロケット班とCanSat班の間の交流がほとんどないために,同じ団体でありながら両者の間で技術や活動内容の共有が行われないこと,ロケット各班の間のコミュニケーション不足が原因でロケットの設計に不都合が発生することがありました.コロナ禍の活動制限で過去の活動内容の引継ぎがうまく行われなかったこともあり,このような,1つの組織の中に独立した複数の組織が存在することに起因する不都合が近年顕著となりました.
このような経緯から,設立当初から続いた班を活動単位とする体制を改め,機体ごと,活動内容ごとにプロジェクトを設立し,プロジェクトを活動単位とする体制へと転換することとしました.より具体的には,製作系プロジェクトとしてロケットやCanSatの各機体ごとにプロジェクトを設置,開発系プロジェクトとしてモデルロケットやGSEなど機体製作には直接かかわらない活動について活動内容ごとにプロジェクトを設置し,プロジェクトごとに活動を行う,団体代表を中心とした執行部がこれらのプロジェクトを統括する,各部員は1つ以上の任意のプロジェクトに参加することで活動内容を選択する,という体制としました.また,旧構造班,燃焼班,電装班はそれぞれ構造系,推進系,電装系と改めロケット,CanSat各機体のプロジェクトに統合することとしました.各活動の独立性が弱まったことで,それぞれの具体的な活動内容をお互いに把握しやすくなり,また各部員も自分の興味に応じて様々な活動に参加することがより簡単になりました.
2022年度末時点で,製作系プロジェクトとして2023年能代ハイブリッドロケットプロジェクト,2023年能代CanSatプロジェクトが,開発系プロジェクトとしてモデルロケットプロジェクト,燃焼架台製作プロジェクト,GSE製作プロジェクトが存在します.また,現在行っているGSEの改良がすべて完了した時点で,新たにハイブリッドロケットモータの自作に関するプロジェクトを設置することを検討しています.
3. 今後の予定
①(モデルロケット)4月モデルロケット打上の実施
4月中のモデルロケット打上の実施を計画しています.2月に実施した試射会とは異なり,電装を搭載した機体やエンジンをクラスターにした機体など,様々なミッションを設定した機体を複数製作する予定です.また,新歓や新入生教育の一環として,新入生にも機体の製作を行ってもらうことを計画しています.
②(ハイブリッドロケット)2023年能代宇宙イベントでのハイブリッドロケット陸打ち
2023年夏に実施予定の能代宇宙イベントにおけるハイブリッドロケット1機の陸打ちに向けて,機体の製作やGSEの改良など準備を進めています.11月伊豆大島のリベンジとして初の自団体GSEによる打上を成功させることは勿論のこと,過去の機体とは大きく異なる構造や,機能の向上は勿論のこと信頼性を重視して改良を行った電装系など,新しいチャレンジを多く取り入れた機体の打上を目指しています.
③(CanSat)2023年能代宇宙イベントでのCanSat競技ランバック部門への参加
能代宇宙イベントにおけるCanSat競技ランバック部門への参加を目指して機体の製作を須進めています.ランバック部門初参加となった今年度の能代宇宙イベントでは,パラシュートの展開から走行までは成功したものの,ソフトの問題から目標への走行を行うことができませんでした.ランバック達成を目指して,画像認識の活用などソフトウェアの改良や,より頑丈で軽量な機体の設計,試作などを行っています.